瀬戸内国際芸術祭2010 - Setouchi International Art Festival 2010 - を知る(記事01)


▽瀬戸内国際芸術祭2010 - Setouchi International Art Festival 2010 -

瀬戸内国際芸術祭2010が開幕したという2010年07月26日の朝日新聞の記事

 直島に隣接する7つの島(直島、犬島、豊島、大島、小豆島、男木島、女木島)を中心とした瀬戸内国際芸術祭2010が開幕したという2010年07月26日の朝日新聞の記事です。
 アートがあれば地方の過疎高齢化や観光不振を打開できるというわけじゃないのは一目瞭然。とっても素晴らしいアートがそこにあればいいわけじゃない。そこに地元の人の協力や助けがあってこそ。世界に名だたる日本の建築家による美術館があればいいわけでもない。それを利用する人たちがいてこそ。国立公園に指定された綺麗な自然があればいいわけでもない。それを愛する人たちがいてこそ。「A Broken Window 現象」って聞いたことあります?どんなに綺麗な街だろうとそこに1枚でも割れたままの窓があるとそこから街が壊れていくというような話。つまりは人の心がすさんでいくってことですよ。現代アートを観るのにルールやマナーは必要ないと思うけど、そこは要は人間の気持ちの問題。まぁいいやとかはダメ。興味を持って接していれば壊れてはいかないはず。最初は興味本位だけで旅行に行ってみるのがいいと思うんですよ。初めっからこの島の悲劇はとかって話を知ってしまうと、どうしても歴史の比重が大きくなってアートの見方が片寄ってしまうから。歴史や事実は興味が出たモノを調べて考えてまた体験するのが一番。来島者が増えることで涙を流しながら喜ぶおばぁちゃんもいれば、迷惑だと怒るおばぁちゃんもいるんです。人間なんだからそれでいいんです。だからこそ、行った人がまた来たいと思うなら今日、この日に行く機会があったことに感謝なんですよ。みんながみんなそうしていると窓は割れないと僕は思います。
 これでまた世界中から大勢の人が直島近辺に集まってきて賑やかになるんだろうなぁ。地元の人や土地に対する最低限のマナーやルールを守ってアートに接していきましょう。では、この記事の中身を紹介しましょう。


『七つの島 美の遍路道』
 直島など瀬戸内海の七つの島を主会場に、初の「瀬戸内国際芸術祭2010」が猛暑のなか開幕した。過疎化対策や観光振興、地域イメージ向上など様々な思いが現代アートを神輿に担ぎ上げ、100日間余の美の祝祭は続く。(編集委員・森本俊司)

●瀬戸内国際芸術祭2010
 香川県の直島、豊島(てしま)、小豆島、男木島、女木島、大島、岡山県の犬島の計7島と高松港周辺(高松市)を会場に10月31日まで開かれる。18の国や地域から75組のアーティストが参加。香川県などでつくる実行委員会は30万人の来場を見込む。直島福武美術館財団理事長の福武總一郎さんが総合プロデューサー、越後妻有のトリエンナーレを仕掛けた北川フラムさんが総合ディレクターをそれぞれ務める。問い合わせは総合インフォメーション087-813-2244かホームページhttp://setouchi-artfest.jp/へ。

●瀬戸内国際芸術祭が開幕
 ガイドマップを頼りに、島に点在するアートを訪ねて歩く。多くは廃墟や野外に展示されている。ほとんどの島にタクシーはなく、バスの便はあっても都会のダイヤにはほど通り。貸自転車の台数も限られ、自分の足を頼りに巡る遍路道という趣である。
 島々が浮かぶ瀬戸内海は1934年(昭和9年)に、国内初の国立公園に指定された。確かに道すがらの海と空の眺めは素晴らしい。しばし疲れを忘れさせてくれる。でも、どんな絶景も空腹を満たしてくれない。だから、島から人が離れ、数十年後には無住になると心配されているのだ。

●直島に年30万人超
 一方で、世界に誇る瀬戸内の景観を貨幣に交換できると証明した企業がある。仲介役になったのが現代アート。直島で87年から現代美術館づくりを手がけ、年間30万人を超える人たちを島内にいざなう集客資源にまで成長させた。
 現代アートを媒介にしたもう一つの成功物語に、2000年から始まった新潟県内の「越後妻有アートトリエンナーレ」がある。過疎の廃校や棚田に現代アートを展示する3年に1度の国際展。昨年までに4回開催した。瀬戸内国際芸術祭実行委員会も、今後は3年に1度の開催を目指していく。

●アートで悲話超克
 物語といえば、美しい瀬戸内海の島々には悲話が多い。近代化の高速交通網整備から外れ衰退した海運業の不運。精錬所の排煙や産業廃棄物の投棄がもたらした環境破壊との闘い。誤った政策によるハンセン病隔離に悲劇など。あちこちに残る近代化の負の物語を超克する役回りを、アートは担わされている。
 期待に応えようとするアーティストはもちろんいる。女木島の展望近くにサウンド・インスタレーションを置いたロルフ・ユリアスさんもその一人だと思う。昨年の越後妻有にも参加した。
 ベルリン在住の彼は、島内などで録音した自然音を加工し、林の中で流す。「静寂がテーマ」と語るように、ざわめきの中でも、よく耳を澄ませてごらんなさいと、静かに呼びかけてくるような作風が印象的である。
 とにかく、欲張らないことだ。一日かけて一つの島を回り切れるかどうか。それぐらいの歩みでちょうどよい。それから体力に自信がなければ、涼しい季節を待っての訪問がお勧めだ。

○○上の写真○○
 地区の公民館を改築して制作された大岩オスカールの「大岩島」。壁と床に絵を描き、左右の壁面に鏡を立て、合わせ鏡のように無限の空間をつくりだした。(香川県の男木島)

○○下の写真○○
 ため池に設置された戸高千世子の「Teshima sense(豊島の気配)」。(香川県の豊島)