瀬戸内国際芸術祭2010 - Setouchi International Art Festival 2010 - を知る(記事02)


▽瀬戸内国際芸術祭2010 - Setouchi International Art Festival 2010 -

瀬戸内国際芸術祭2010が開幕したという2010年07月29日の讀賣新聞の記事

 直島に隣接する7つの島(直島、犬島、豊島、大島、小豆島、男木島、女木島)を中心とした瀬戸内国際芸術祭2010が開催中だという2010年07月29日の讀賣新聞の記事です
 地元の人たちに敬意を払い、マナーを守って協力し合いながら接して楽しんでいこうという、ベネッセアートサイト直島のテーマをよく理解できてまとまった記事だと思います。また、直島以外に点在する各作品は瀬戸内国際芸術祭が終わってしまった後はどうなるのか疑問ですが、「越後妻有アートトリエンナーレ」のように3年に1度開催していきたいという記事も他で読んだことがあるので、このまま数年程度続けていくとアーティストさんや建築家さんたちが予想もしていなかったような楽しい出来事が起こることを期待したいと思います。(例えば、直島をスタートにシルクロード上にアートプロジェクトを展開してウェブ上で世界中とアートを媒介にして相互交流できるようなのとか・・・)
 芸術と生活の境界を極限までに曖昧にしているこられのプロジェクトにとても強い印象を受けると同時に、では芸術と生活の違いはどこにあったのかという疑問が浮かびあがってきます。例えば器ひとつにしても生活で生まれた形や大きさもあるだろうし、柳宋悦さんの民藝に類する器もあれば芸術だと称される器もあるけど、これこそ明確な線引きがあるわけでもないですよね。ただ、明確な線引きをすることが正しいと言ってるんじゃないんです。時代やそのモノの考えに沿って動く境界を楽しむってのも芸術を楽しむひとつなんじゃないでしょうか。観る側も勉強や熟考を重ねて判断できる知識やセンスを身につけるととても楽しいお祭りが続くのかもしれませんね。
 これでまた世界中から大勢の人が直島近辺に集まってきて賑やかになるんだろうなぁ。地元の人や土地に対する最低限のマナーやルールを守ってアートに接していきましょう。では、この記事の中身を紹介しましょう。


『島の自然・歴史 美と一体』

●瀬戸内国際芸術祭
 瀬戸内海に浮かぶ七つの島と高松港周辺を会場に、瀬戸内国際芸術祭が開催中だ。18の国・地域から75組の芸術家が参加して、島の自然や歴史と深く結びついた作品を送り出した。(木村未来)

●18か国・地域から75組
 地中美術館など数々の施設で今や現代アートの聖地となった感のある直島。島の南に、高さ18.5mもの六角形のコンクリート柱がそびえ立ち、傍らには鉄板と石が一見無造作に置かれている。李禹煥(リ・ウーファン)の作品「関係項−点線面」だ。三方を山に囲まれ、眼下には青い海が広がるロケーション。まっすぐに伸びる柱が空と海の広がりを強調する。
 6月開館の李禹煥美術館は安藤忠雄の設計で、周囲の緑に埋もれるような半地下構造が特徴。三方の壁に描かれた壁画と向き合う「瞑想の間」など島独特の時間の流れを体験できる。
 直島では1980年代後半からベネッセホールディングス(岡山市)が次々にアートプロジェクトを展開してきた。ホテルを備えた美術館「ベネッセハウス」や、古い家屋や跡地を美術作品として再生する「家プロジェクト」−。芸術家は、これらの活動をペースに地域を広げて発展的に展開しようと、香川県などが中心になって、2年前から準備を進めてきた。
 総合ディレクターは北川フラム。新潟で2000年から3年ごとに開かれている「越後妻有アートトリエンナーレ」を企画、実行してきた経験を基に、島の特徴を存分に生かした魅力的なプログラムを練り上げた。
 犬島での「家プロジェクト」(妹島和世、柳幸典、長谷川祐子)の一つ「I邸」では民家内部の大型プロジェクターで人間の負の歴史を見つめてきた『死者の瞳』を投影する一方、外壁では、未来を見つめる子どもの瞳を映し出す。陽光の下、咲き乱れる約150種の花や鑑賞者の姿が一緒に映り込む。
 銅の精錬所があった島の過去と、芸術を媒介に人々が交流する未来とに置き換えることもできそうだ。
 かつて産業廃棄物の不法投棄問題に揺れた豊島。フランスのクリスチャン・ボルタンスキーは、「世界の中で最も美しく、神話的な島」と呼ぶ。
 芸術祭に合わせて同島に開館した美術館「心臓音のアーカイブ」では、心音に合わせて電球が明滅する彼の作品などが楽しめる。
 島の自然や昔ながらの施設に影響を受けた作品も。
 青木野枝は共同用水場「唐櫃の清水」の水に魅せられ、2年前から通う。「信仰と交わりの場としてにぎわった記憶を呼び起こしたい」と鉄の彫刻「空の粒子」を制作し、清水の近くに設置した。戸高千世子は、「豊島の気配」と題した作品で、棚田に囲まれた明神池に、鳥の羽をイメージさせるオブジェを幾つも浮かべた。風が吹き抜けると、軽やかに羽が動く。
 移動は船が中心になるため、発着時間の確認など、綿密な計画が必要となる。ただ、スケジュールに追われずに過ごす旅こそ、この芸術祭の妙味と言える。一つの島をじっくり見て歩くのもいい。地元の人たちが民家などに飾り付けた楽しい装飾と出会え、会話のきっかけとなるに違いない。
 10月中旬には豊島に、西沢立衛が設計し、内藤礼の作品を展示する豊島美術館も開館する。
 芸術祭(10月31日まで)の詳細は総合インフォメーションセンター(пF087-813-2244)かホームページ(http://setouchi-artfest.jp)で。

○○左の写真○○
 瀬戸内の強い陽光の下、まっすぐに伸びるコンクリート柱が印象的な李禹煥の「関係項−点線面」(直島で)

○○右の写真○○
 犬島の「家プロジェクト I邸」