▽瀬戸内国際芸術祭2010 - Setouchi International Art Festival 2010 -
直島に隣接する7つの島(直島、犬島、豊島、大島、小豆島、男木島、女木島)を中心とした瀬戸内国際芸術祭2010が開催中だという2010年09月06日の讀賣新聞の記事です
ベネッセが目指す芸術と生活の融合がこれほどまでに日本人に興味があったとは思いもしませんでした。美術館や博物館でロープの外から見るアートとは別のカタチのアートが目の前にある、わからなくても楽しい、都会にはない新鮮さがそこにはある。それがこの瀬戸内国際芸術祭2010です。
多くの情報がハイスピードで行き交う現代では芸術の一部も同じようにハイスピードで作り捨てられていくことがありますが、この瀬戸内国際芸術祭ではハイスピードの現代芸術が何百年ものあいだに少しずつ培われてきた地元の生活と結びつくことで新しい感覚を生み出しているんだと思います。その新感覚が郷愁と相まって若い人からお年寄りに至るまで、これだけの人気ぶりになるんでしょうね。この瀬戸内国際芸術祭2010で経験したモノ・考え方・想いが、毎日の日常生活に少しでも変化をもたらしてくれるように観る側も努力していければと思います。自分の日常生活の中や人間関係の中、自分が動くことで起こるいろいろな事象の中に人間を豊かにしてくれるモノがあるはずです。この芸術祭が一過性のアトラクションや娯楽にならないでほしいと切に願います。
では、この記事の中身を紹介しましょう。
『瀬戸内アートごゆるりと』
過疎化と高齢化が進む瀬戸内海の7島が、現代アートの祭典「瀬戸内国際芸術祭」の舞台となり、にぎわっている。離島ならではのゆったりした時の流れが、現代芸術と調和して新たな魅力を生み出し、多くの人の心をとらえている。
曲がりくねった路地が続く男木島。人口は約200人で30年前から6割減り、高齢化率は61.3%。島の高齢者が日頃、荷物を運ぶのに使う「オンバ」(乳母車を指す方言)を、5人の芸術家チームが羽やライトで飾り、動く芸術作品に変身させた。昨年1年間の来訪者が4199人だった島に、7月19日の開幕から約1か月で約2万人が訪れた。
先月15日には、急峻な路地をオンバを押して歩く体験ツアーが開かれた。17人が参加し、“オンバ生活”を体感した。芸術家チームの一人、大島克文さん(55)は「ゆったりした『島時間』の素晴らしさを知って、再訪してほしい」と期待する。
国立ハンセン病療養所「大島青松園」がある大島では、期間中、月1回、入所者が得意なことを来島者に教える「名人講座」を開く。先月14日には入所者自治会長の山本隆久さん(77)が来島者17人に陶芸を教えた。隔離政策のため、一般来島者と一緒に陶芸を楽しんだことはなかったといい、「有意義な時間でした。これを機に外部との交流を深めたい」と笑顔を見せる。
芸術祭には世界18の国・地域から75の芸術家・プロジェクトが参加。産業廃棄物が不法投棄された豊島、「鬼ヶ島伝説」で知られる女木島、現代アートの聖地ともされる直島、城の石垣などに島の石が切り出された犬島、そして小豆島。廃屋を利用した作品などが点在する。来場者は、開催1か月で20万人を超えた。閉幕は10月31日。現代アートと溶け合った離島の活性化に、目が離せない。
写真と文 吉野拓也
○○上の写真○○
炎天下、行われた「オンバツアー」。家族連れらが現代アートを施したオンバを押して島を散策した(男木島)
○○中右の写真○○
防波堤に並んだ「カモメの駐車場」。風見鶏のように風向きが分かる(女木島)
○○中左の写真○○
地元の竹5000本を使って造られた「小豆島の家」。棚田の中にたたずむ(小豆島で)
○○下右の写真○○
会場の島々へ向かうフェリーには、連日多くの人たちが乗船した(高松港で)
○○下左の写真○○
国立ハンセン病療養所「大島青松園」で開かれた「名人講座」。山本隆久さん(中央)の指導で、
参加者は陶芸を楽しんだ(大島で)