▽瀬戸内国際芸術祭2013 - Setouchi International Art Festival 2013 -
直島に隣接する8島(直島、犬島、豊島、大島、小豆島、男木島、女木島、伊吹島)を中心とした瀬戸内国際芸術祭2013が開催するという2013年07月19日の讀賣新聞の記事です。
ビエンナーレやトリエンナーレといった芸術祭が日本各地で開催されているけど、その中でもこの瀬戸内国際芸術祭は大成功を収めているといえるだろう。
アート作品が作品だけに留まらず、それを通じて過疎地域の活性化につながり、国内外からの観光客を呼び、いろいろな媒体で取り上げられ、さらにアートも人も施設もエリアも増殖する・・・。この全体像こそが生きてるアートそのものなんだな。
ただ、人に認められるアートが芸術祭にはある一方、自分の目の前のモノや日常の中にも秘められているんですよね。では、この記事の中身を紹介しましょう。
『被災ピアノ アートで再生』
●瀬戸内芸術祭 あす夏会期開幕
宮城県石巻市で東日本大震災の津波に遭ったグランドピアノ2台が現代アート作品になり、20日に夏会期が開幕する瀬戸内国際芸術祭の会場の一つ、伊吹島(香川県観音寺市)で展示される。オランダ在住のピアニストで、美術家の向井山朋子さんが手がけた。「日常を必死に取り戻そうとしている被災地の今を感じてほしい」と願う。
作品名は「夜想曲」。島の空き家に、脚の折れた1台のピアノが逆さまに置かれ、弦の壊れたもう1台の胴体の内側にピンクの口紅が塗られている。
2011年3月11日、2台は、宮城県石巻市立湊、湊第二の両小学校で被災した。オランダにいた向井山さんは、被災地で多くのピアノが路上にうち捨てられていると、知人で、東北芸術工科大(山形市)の宮本武典・准教授から聞いた。「それまで実感できなかった被害の大きさが、身に迫った」と振り返る。
被災地を直接見たいと、その年の夏、石巻市を訪ねた。避難所で、1人の若い女性と出会った。
女性は用事で仙台市へ行った際、通行人の化粧を見てはっとした、と話した。震災後、身なりを気にする余裕はなかった。口紅をつけたが、避難所に戻ると誰も化粧をしていない。気まずくなった洗い落した。
「口紅を引くというささいな行為も、日常を取り戻す大事な要素だと感じた」と向井山さん。両小に頼んで使えなくなったピアノ2台の提供を受け、創作した。ピアノを通常と逆の位置にすることで止まった時間を表現し、再生の象徴として口紅を塗った。
湊小は今、内陸の中学校に間借りする。校舎の改修が今月末に始まり、別の仮校舎で学ぶ湊第二小と来年度に統合され、元の校舎に戻る。星圭・湊小校長は「子どもたちがピアノの音に合わせて歌った、普通の日々がいかに大事だったか」と語る。
作品は11年秋に山形市で展示され、今回が2回目。宮本准教授は「震災から2年以上がたち、ピアノについた泥は砂になり、鑑賞者は風化を目にする。震災の記憶を伝えるとともに、将来の災害に警鐘を鳴らす役割も果たす」と評価している。
●瀬戸内国際芸術祭
2010年に続き2回目。アート鑑賞とともに瀬戸内海の島の景観や暮らしを感じることができ、10年は延べ93万人が訪れた。今年は春、夏、秋の3会期に分けて開催。夏会期は7月20日〜9月1日。香川県沖の8島と高松港(高松市)、宇野港(岡山県玉野市)で、約20か国・地域の約200点が出品される。伊吹島は夏会期のみで、計9作品を展示。観音寺港から船(会期中1日6往復)で25分。
○○上の写真○○
ピンク色の口紅を施した作品を前に、「日常を取り戻す意味を感じて」と語る向井山さん(香川県観音寺市の伊吹島で)=新居重人撮影