瀬戸内国際芸術祭2013 - Setouchi International Art Festival 2013 - を知る(記事07)


▽瀬戸内国際芸術祭2013 - Setouchi International Art Festival 2013 -

瀬戸内国際芸術祭を巡るという2013年08月01日の讀賣新聞の記事

 直島に隣接する8島(直島、犬島、豊島、大島、小豆島、男木島、女木島、伊吹島)を中心とした瀬戸内国際芸術祭2013を巡るという2013年08月01日の讀賣新聞の記事です。
 昔は美術館に第一世代とか第二世代、第三世代ってあったけど、芸術作品にも世代ってありそう。
 個の中から生まれる芸術やら技の中から生まれるもの、美の中、モノの中、自然の中、時間の中、関係の中、そしてこの瀬戸内国際芸術祭では多くの作品が固有の文化や歴史といった地の中から生まれる芸術を楽しむことができるんですね。近年、美術館が箱モノでは追いつかなくなってきていますけど、瀬戸内国際芸術祭なんてその典型。美術や芸術、生活、歴史、建築、ランドスケープといった枠組みすら曖昧で、そのグレーなゾーンにこそ何かを見いだしてる作家が多いんですかね。美術や芸術の消費スピードが速い現代、ベクトルがそこからどこに向くのかも楽しみ。
 これでまた世界中から大勢の人が直島近辺に集まってきて賑やかになるんだろうなぁ。地元の人や土地に対する最低限のマナーやルールを守ってアートに接していきましょう。では、この記事の中身を紹介しましょう。


『瀬戸内国際芸術祭を巡る』

 瀬戸内海の島々などを舞台に、3年に1度開かれる「瀬戸内国際芸術祭」の夏会期が繰り広げられている。八つの島と高松港、宇野港を巡りながら、それぞれ固有の文化や歴史と深く結びついた作品との出会いを楽しむことができる。(大阪文化・生活部 木村未来)

●固有の文化、歴史と結びつく
 主催は香川県を中心とする実行委員会。展示されているのは約20か国・地域の作家による約160点で、夏に初めて披露される作品は45点にのぼる。
 先月、豊島(香川県)に開館した「豊島横尾館」は70〜100年前に建てられた古民家を改修してつくられた。建築家の永山祐子さんが設計を手がけ、横尾忠則さんの絵画など11点を展示している。
 テーマは「生と死」だ。庭から母屋の床下にかけて三途の川をイメージした池がある。高さ14メートルの塔も建てられ、内部は横尾さんが集めた約9000枚の滝のポストカードで埋め尽くされている。
 男性を象徴する塔や滝と、女性を象徴する川が合体して生命が生まれる場であることを示す一方で、倉や母屋にはスイス出身の画家、ベックリンの「死の島」から想を得た作品を掛けた。
 既存の建物に刻まれた時間や記憶を織り込みつつ、生まれ変わらせるリノベーションの手法と相まって、生と死は隣り合わせだと示唆するようだ。産業廃棄物の不法投棄が問題になり、「ごみの島」と言われていた豊島が、アートを楽しむ若者らでにぎわうようになったここ数年の変化にも思いをはせたくなる。
 女木島(同)では、休校中の小学校中庭に大竹伸朗さんが「女根/めこん」を制作した。島の植物の生命力に魅せられ、女木島のヤシがブイの上にそびえる立体を春会期から公開してきたが、今回新たに現在は使われていない機械室にも、多彩な植物や鉄くずをびっしり貼りつけた。
 夏会期のみ会場となる伊吹島(同)では、廃校となった小学校が会場になっている。1、2階の教室に展示されているのは豊福亮さんと、自身が主宰する美術予備校の生徒による「沈まぬ船」。近年、漁獲高は減少しているものの、伊吹島が煮干しイワシ(いりこ)の生産地として知られ、漁が盛んであることに想を得た。発泡スチロールやストローを素材に、島民らと作った浮き約6万個を漁業用の網につけて海や魚の群れを表現している。
 大岩オスカールさんは、体育館に直径12メートル、高さ6メートルのドーム状の「大岩島2」を設置した。内側にはマーカーを使って瀬戸内の風景が描写され、空と海に包み込まれるような感覚を体験できる。3年前に開催された1回目の芸術祭でも、男木島(同)の旧公民館の壁面や床に貼ったシートに海や島を描いた「大岩島」を出品したが、会期中に火災で焼失。これに続く2作目である。
 芸術祭は、現代美術を媒介として瀬戸内の島々に活力を取り戻す目的を掲げるが、こうした出品作からも場所や産業の〈再生〉を図っているのではないか。春会期の33日間で約26万3000人、7月20日からの会期では開幕からの9日間で約6万9400人が来場したという島巡りの魅力は、そこにあるのだと思う。
 夏会期は9月1日まで。10月5日から11月4日までが秋会期となる。

○○上の写真○○
 「豊島横尾館」には三途の川をイメージした鮮やかな池がつくられた

○○中の写真○○
 大竹伸朗さん(左)が制作した「女根/めこん」。機械室が植物などで覆われている。

○○下の写真○○
 豊福亮さんとChiba Art Schoolによる作品「沈まぬ船」